思い起こせば、一昔前までは肉も骨付きで納品し、料理人が競い合ってさばき、やれ誰が早い、やれ誰のがきれいだ、とあちこちから歓声がわいたものでした。時代の流れとともに商品の形態も変わり、今ではほとんどがポーションカット、少し手を加えれば完成する半製品とそれは便利になりました。

しかし、便利なだけで本当に良いのでしょうか。何か大切なものを忘れているような気がしているのは私だけでしょうか。魚の顔を知らない料理人、この肉が牛のどこの部分かわからない料理人、そんな料理人が増えていませんか。マニュアルだけでなく、実際に塊を触り、骨を抜き、手に伝わる感触でどんな調理法が適しているか考察する、そんなことも大切ではないでしょうか。

少しでもお客様のお手伝いをしたい、その思いで新商品を開発しつづけてまいりましたがふと立ち止まり考えるに、私どもが料理人から大切なものを取り上げてしまったのではないかと思うようになりました。カッコイイ言い方をすれば、プロ野球選手がバットを作るのに使用される木を植樹する、そんな気持ちで“ミスターブッチャープロジェクト”を企画いたしました。